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Amor vincit omnia__愛の勝利

第15章 あなたは太陽(跡部景吾)




「暑っついね〜」
「ほんっと夏到来って感じよね」


青空太陽が眩しい日差しの元、黄色いボールを打ち合う音が木霊する中蝉の声もけたたましく鳴り響くコート。
関東大会は青学に初戦で敗退した氷帝だったが、開催枠として全国大会に参加出来ることになった。全国大会まであと2週間弱。
今日も正レギュラーは部活に勤しんでいた。


「頼華、ちゃんと水分とってるかい?」
「取ってるよ、へいき!そういう萩之介は?」
「俺は体力あるから大丈夫だよ」
「もー、ちゃんと取らなきゃ駄目だよ?」
「ふふ、分かったよ。あ、ほら、試合終わったみたいだよ」


萩之介に言われた通りにコートに目をやると景吾くんと忍足くんの試合が終わった所だった。


「はい、お疲れ様景吾くん」
「あぁ、ありがとよ頼華」
「やっぱり跡部には勝てんわ」
「ふ、俺様に勝とうなんざ100年はえーよ」
「はいはい」


関東大会の敗退以来、景吾くんのストイックさは更に磨きがかかったようになった。毎日毎日学校以外はトレーニングに勤しんできた彼をずっとそばで見てきたのだ。


「ねーねー、頼華ちゃん!」
「?どうしたの、ジローくん」
「今日の夏祭りいくの?」
「へ?夏祭り??」
「なんだ龍ヶ崎、知らねーのか?」


宍戸くん曰く、毎年商店街から神社まで歩行者天国とし、商店街総出で夏祭りが盛大に催されているらしい。
私が最後に夏祭りに行ったのは何時だったかな。とふと思う。お母さんがまだ生きていた頃だった。お母さんが亡くなってから何処にも出掛けることはなかったなぁなんて。


「───い、おい!龍ヶ崎!」
「あ、っと、ごめん」
「どうした?急に黙って」
「あっ、いや、何でもないよ」

変な奴だな、と向日くん達は笑ってた。
お母さんのことを考えると何だか少し寂しくなる。夏祭り=お母さん、という記憶になっているからかな。


「おら、お前らぼさっとしてねーで早く片付けな」
「へいへい」


景吾くんの一言で皆が片付け始めたのを横目に私も片付けなきゃとスポドリの空に手を伸ばした。

だけどそれは景吾くんの手によって遮られた。

「おい、樺地。頼華の分の片付け頼むぞ。」
「ウス。」
「えっ!?ちょ、景吾くん!?」
「いいから、お前はこっちだ」

私の手を取り部室に歩き出す彼は聞く耳を持たなかった。
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