第14章 大切だから(跡部景吾)
彼の綺麗なアイスブルーがこちらを見ている。真っ直ぐに私を見据える視線に耐えられなくてつい目を逸らした。
「…なんの話?」
景ちゃんは知らないはずだ。私が虐められているなんて。その話じゃないよね、きっと。
「…何故俺に言わなかった?」
「ものが無くなる事が多いんだろ?」
景ちゃんに、知られてしまっていた。敢えて虐められているとは言わないところに景ちゃんの優しさを感じたけれど。何故分かったんだろう。友人にも景ちゃんの耳には入れたくないと伝えていた筈だ。
「…何年、お前を見てると思ってるんだよ」
少し声のトーンが高くなった気がして景ちゃんを見れば泣きそうな顔に見えた。
「…全部、全部見せろよ」
「…あ、跡部くん…?」
「…お前が大事なんだよ」
手首を掴まれたかと思うと彼の匂いに抱き締められた。
「誰が何と言おうが関係ねぇよ、」
お前は俺のそばにいろ。
私はずっとそれを待っていたのかも知れない。しゃくり上げたように泣き始める私の背中を彼はずっと摩ってくれていた。
「これからはもう一人で泣くなよ、頼華」
「…え?」
「お前、隠してるつもりだったのかもしれねぇが、ここんとこ毎日目が充血してたぞ」
「!…ご、ごめん」
「なんでお前が謝るんだよ。」
「泣きたいなら俺様のところに来いよ」
「好きな女1人くらい守らせてくれ」
「け、景ちゃん…っ」
その呼び方の方がお前はしっくりくるな、と笑う彼の顔を見て漸く私も笑える気がした。
─────あなたは太陽
(俺の)(私の)
(1番輝くひと)
景ちゃん大好きだよ、と彼に抱きつけば知ってると言わんばかりに頭を撫でられて。
私が彼の横で再び笑顔を取り戻すのもそう遠くない未来。
end
あとがき
お読み頂きありがとうございます。
跡部くんって色んなもの背負ってるが故に女の子同士の争いが耐えない気がして…なんとなく書きました。
好きな女の子は何が何でも守るタイプだと思う。