第12章 勇気(跡部景吾)
「あ、っ、あ…んぅ…っ!」
「…っく。頼華」
律動しながらも跡部が頼華の名前を呼べばきゅっと閉じられていた彼女の目が開く。
「は…頼華、俺を見てろ」
「あ、ん…そ、んなぁ…恥ずかしぃ…っ!」
「お前の目の前にいるのは俺だと目に焼き付けろ」
跡部の全てを見抜くような眼に頼華の身体は更に熱を帯びていく。ふたりの熱に魘されるように跡部はネクタイを解き乱雑にシャツを脱ぐ。時折跡部から流れる汗が頼華にぽたりと落ちていく。
「あ、とべく…も、う…!」
「…っあぁ、俺もだ」
更に奥にねじ込むようにして律動すれば頼華の身体はびくびくと波を立てる。
「は、名前で、呼べ…!」
「や、ぁぁ…っ…け、いごくん…!」
「…っく、頼華……!」
頼華がびくんと背を仰け反らせると同時に跡部もその締めつけに己の欲望を吐き出した。
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優しく頼華の身なりを整えた跡部は終わると同時に頼華を抱きしめた。
「…痛くなかったか?」
「うん、大丈夫、痛くなかったよ」
そう照れ笑いする頼華の頭にキスを落とす。
「…さぁ、出掛けましょうか、お嬢さん」
「…え?」
「お前の行きたい所、どこにでも連れていってやるよ」
その言葉に頼華は跡部の手を取ると小さく微笑んでいた。
勇気
──それは一歩踏み出す未来への兆し
(どこか行きたい所あるのか?)
(景吾くんと居れるなら何処でもいいよ!)
(…そうか)
優しい眼差しで跡部と頼華が出ていった門を見つめる颯一郎がそこにはいた
end