第10章 だって(跡部景吾)
中学生というものは噂が好きな生き物だなとつくづく思う。跡部と付き合いだした頼華は一人ため息をついた。
「なんだ、悩み事か?お前にしちゃ珍しいじゃねーの」
アーン?と生徒会室の跡部専用の椅子に座り彼は笑う。…あんたが原因なんだけどね!と彼女は思いながら半ば諦め気味だ。
それは数時間前に遡る。
頼華はいつもの様に学校へ向かっていた。
「おはよー!!」
「あ、頼華、おはよ!」
正門で友人と出会し挨拶を交わす。
「ちょっと、聞いたよ!」
「え?何が?」
「あんた等のことよー!」
「は?」
友人が話すには最近頼華が綺麗になったのであの跡部とキスまでいったのではないかと噂で持ち切りらしく。しかも中にはその先までもういってるのではと決め込む奴もいるらしい。
「…何よそれは」
「跡部くんとAもBも済ませてるとはねぇ」
「…言い方古すぎ」
そもそも跡部と頼華は学園中公認の仲で。とは言え跡部が全校放送で頼華は俺様の女だと宣言したからなのだが。
それはそうと、何でそんな噂が広まっているのだと頼華は朝から頭痛に悩まされた。移動教室の際も何をしていても跡部と自分の事が言われている。…もしかして、いや、まさかね、と思った頼華は跡部がいるであろう生徒会室に足を運んで今に至るのであった。
「お前。もしかして」
お前と俺様の噂のことで悩んでんのか?と跡部の眼力は見抜いていたようで。
「事実じゃねーの」
ふん、と跡部はニヤニヤ笑っていた。…人の気も知らないでこいつは。と頼華が思うと気付けば目の前には天井と跡部が。
「…ちょっと、何してるの」
「…ナニしかねぇだろ?」
それとも力ずくで俺様を拒むか?と問いかける跡部の表情に頼華は押し黙ってしまった。アイスブルーの彼の瞳に映るのは押し倒された己の姿で。
「…景吾、」
「…もう、黙ってろ」
そう言う跡部は彼女に口付ける。ちゅ、と軽いリップ音だけだったそれが次第に深くなっていく。それで力の抜けた頼華の柔らかな膨らみに跡部は手を伸ばした。
「ん、ぅ…あ、っ…」
「…可愛いじゃねーの、頼華」
自分のネクタイを少し緩めた跡部は色っぽく感じて。とても中学生のそれとは思えない表情だった。