第7章 奥手な皇帝(真田弦一郎)
立海大附属中学校風紀委員長と言えば誰もが知るテニス部の副部長。笑った顔なんて殆ど誰もが見たこと無かったのだがそれはとある女の子の前ではまるで人が変わったようになるとは誰も知らない。
朝、風紀委員は校門前にて風紀検査をしている。勿論そこには真田が。今日も鬼のような形相で髪が長すぎるから結べ、襟元を閉じろ、など通り過ぎていく生徒たちを注意していたのだが。
「弦一郎ー!おはよー!」
女子の制服もネクタイである立海大附属の制服を、ネクタイを緩めスカートは膝上で短く着崩した少女───頼華が真田の元へ駆け寄る。
「おはよう、頼華……む!?その格好はやめんか!!」
「えー、相変わらず堅苦しいなぁ」
そう言われた彼女は制服を直すこともなく朝のハグ!と言いながら真田に抱きつく。
「!…やめんか、人前で…!」
「見せびらかしてるのー!」
ふふ、っと笑って彼女は真田から逃げる。それを待たんか!と追いかける光景は日常茶飯事だ。
「まーたやってるよ、副部長と頼華さん」
「真田は堅すぎるんだよ」
「弦一郎はあれでも頼華にはとことん甘いからな」
赤也と幸村、柳の3人はその姿をテニスコートから見ていた。
結局頼華は一日中その制服を直すことは一切なく──というか注意しても聞かない頼華を怒る教師ももう居ないから彼女は好き勝手に過ごしていた。
「弦一郎ー!」
放課後になり真田に部活へ行こうと声をかける頼華。
「………」
「弦一郎…?」
いつもなら、あぁ行こうと彼女と共に部室へ行く真田だが今日は何かが違う。
「え。なに、怒ってるの?」
眉間にシワを寄せる真田に頼華は問う。
「…あぁ。」
「…あたし、何かした…?」
少し不安げな彼女の表情に気づいた真田は頼華の手を取ったかと思うと彼女を壁際に追いやった。
「…!」
普段奥手な真田からは想像もつかない顔。彼女は少し焦る。
「お前は…」
「げ、んいちろー…?」
「……お前はいつ俺の言うことを聞くのだ?」
そう言った真田は頼華の肩に顔を埋めた。びくりと反応する頼華。
「…俺を誘っているのか?」
そう言った真田は彼女の足の間に自らの足を滑り込ませた。
「それとも…俺が欲情しない、とでも?」