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Amor vincit omnia__愛の勝利

第5章 照れ屋と優しさ(跡部景吾)



普段は俺様で傲慢と言われている彼だけど私にはとても優しくてどんな時でも私を優先してくれる。私はといえばどうだろう。跡部くんの優しさに胡座をかいている。彼を不安にさせてしまっていたのだと分かると何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになって。思わず屋上の扉に寄りかかると少し音が鳴ったのか忍足くんがこちらに気づいていた。

「頼華ちゃんおるで」

少し驚いた顔でこちらを見る跡部くん。ごめんなさい、立ち聞きして、と心では思いつつどうしていいかわからない。おずおずと屋上に踏み出せば入れ違いに忍足くんが隣を通り過ぎる。

「ちゃんと分かってんで、大丈夫や」

そう言って出ていく忍足くん。跡部くんはずっとこちらを見ている。何時もなら彼から話し掛けてくるのだけれどここだ、と決心した

「ねぇ、跡部くん…」

心做しか自分の声が少し震えている。彼はどうした、とちゃんと聞いてくれようとしてる。どうしよう、伝えたいのに伝え方がわからない。所謂私にとっては初めての恋人で。跡部くんはどうしてくれたっけ、あぁ、もう、なんて思ってると頼華、と腰を曲げて顔を覗きこもうとする跡部くんがいて咄嗟に身体が動いていた。自分でもわかるくらい顔が赤くなってる。もうこのままいっその事素直に言ってしまおう。と漸く気持ちが決まった。

「跡部くんが、好き、だよ…?ごめんね、今まで伝えられなくて。」

やっと、言えた。彼は嬉しそうに笑っていて。耳元で名前を呼ぶものだから耳まで赤くなったのが自分でもわかる。ふわり、と彼のブレザーを頭に被せられたと思ったら浮遊感があり彼よりも視線が高くなる。清涼感があるけれどローズの華やかさとバニラの甘い香りがする彼がいつも付けている香水が鼻を掠めた。どうしたの、と聞く前に跡部くんの顔が近づいていて。己の唇に彼のものが重なる。恥ずかしくて彼の裾をぎゅっと握るとこっちだろ、と言わんばかりに手を握られる。名前で呼べと急かされ、景吾くん、と言うと彼にまたキスされた。


照れ屋と優しさ

(優しい貴方に寂しい思いは)
(もうさせないからね、景吾くん)

(えと…景吾くん、お願いがあるの)
(ほぅ、珍しいな)
(今日…一緒に帰りませんか?)
(!!…あぁ、喜んでお嬢さん)

微笑み合うふたりを包む空気はそれはそれは穏やかで。しれっと隠れてみていた忍足の顔も満足気でした。
end
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