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Amor vincit omnia__愛の勝利

第5章 照れ屋と優しさ(跡部景吾)




出会った時から彼女は何時もそうだった。150にも満たない身長の癖にまるで男より強いのではと思う俺の彼女。女っ気なんてほぼ皆無に等しいかもしれない。学校では女子空手部主将であり小さい身体から放たれる足蹴りはとても凄まじく。彼女に出会ったのは3年になってからだ。元々空手部自体が強豪なのは知っていたものの、それが女子だと知ったのも3年のとき。空手部は基本的に室内練習場である為テニスコートにいる俺たちとは関わりがなかった。と俺は思っていたが実際の所知らないのは俺だけで。忍足はまぁ、脚フェチだしなと思いつつ俺以外が彼女を1年の頃から知っていた。初めて同じクラスになった彼女は最初はとても小さいやつだなと思っていた。そんな時休日に俺は父の会社に呼びだされその帰りに何気なしにリムジンから覗く外を眺めていると目に入ったのは頼華の姿。最初は黒ずくめで歩いている人間はなんだと思ったがそれは頼華だった。学校では長い髪を結わえてポニーテールにしている彼女は休日だからだろう髪をおろし背中まである髪を揺らしながら歩いていた。その服装もまた、女らしからぬ男のような服装だが。興味が湧いた俺はミカエルに車を停めさせ、頼華に話しかけた。それが始まりだ。次第に学校内でもよく話すようになっていて俺もいつしか彼女の隣にいるようになって。しかし勿論簡単には事は進まない。それを妬んだ雌猫共が頼華を呼び出したりもあった。まぁ頼華には何ともなかったようだが。
勿論気持ちを伝えたのは俺からだ。その時の頼華といえば顔を真っ赤にしてこくりと頷いた。
彼女と付き合って3ヶ月───未だに彼女から好きと言われた事がないとふと気づいた。いつも言うのは俺ばかりだ。彼女は俺が好きなのか、と何時にもなく不安を感じ仕方なしに忍足に相談してみることにした。

「ほぉ、成程なぁ。お前でも悩むことあるんやな」

跡部、と笑う忍足に相談する相手を間違えたなと跡部は1人ため息をついた。

「溜息なんかついたら幸せ逃げてくで」
「…うるせぇよ」
「頼華ちゃんがお前を好きやなんてなー」
「…だからそれを相談してんじゃねーか」
「そう睨まんといてや。」

おぉ、怖、と肩をすくめる忍足を睨みつける。こいつ、1発殴ってやろうか。うん、いっその事メガネも割ってやろうか。
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