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Amor vincit omnia__愛の勝利

第1章 ただそばに居たかった(灰崎祥吾)




ずっと小さい頃からそばに居たはずなのに。

帝光バスケ部に入った彼は実力が上がると共に暴力沙汰も耐えなくなっていった。彼がバスケ部に入ったと同時に私もマネージャーとしてただ彼を支えていたかった。けれど日に日に増していく彼の過激さを止めることは出来なかった。そう、彼がバスケ部を退部させられたあの日も。

いつのまにか彼は学校に来なくなっていた。義務教育だから卒業には差し障りなかったが学校で彼を見ることはなくなっていた。


いつしか時は流れ私は今桐皇のマネージャーとして日常を過ごしていた。そんな時だった。



「はぁ!?次の試合灰崎が出てくるだと!?」
「うん、今静岡の福田総合で主力メンバーになってる。」
「ムカつくヤローが帰ってきたぜ……」
「灰崎くん、暴力沙汰が絶えなかったけど実力は確かよ」
「… 頼華は知ってるのか?」
「まだ伝えてないけど、ウィンターカップ見に来てはいるみたい」
「…そうか」


青峰ははぁ、と1人深いため息をついた。灰崎の幼なじみである頼華を心のどこかでずっと気にかけていた。もちろん灰崎が退部させられたあの日も1人まるで貼り付けられた笑顔を見せる痛々しい頼華の表情が忘れられなかった。それで1人にはしておけないとさつきと共に桐皇を受験するよう薦めたのだ。


試合はやはり黄瀬率いる海常の勝利。試合の途中途中に見せる灰崎の言動に青峰はただただ苛立っていた。


「…先帰ってろさつき。ちょっと行ってくるわ」
「え!?ちょ、大ちゃん!」


青峰の思った通り灰崎は出入口で黄瀬を待ち構えている様子だった。

「…黄瀬たち海常ならまだ来ねぇぞ」
「あ?…ダイキ」
「復讐とか考えてんならやめとけ」
「はっ、お前に何がわかる?俺はお前らと違って
バスケなんてなんとも思ってねぇよ。」
「…そうかよ」


止めたければ全力で止めてみろと言わんばかりに殴りかかってくる灰崎を避け、青峰は1発灰崎を殴った。黄瀬の為でもなんでもない頼華の気持ちを考えると自然と手が出ていた。時々灰崎を思い出してなのかどうなのか本人の口からは聞いたことは無いが頼華が屋上で空を見上げながら泣いていたのを青峰は知っていた。

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