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Amor vincit omnia__愛の勝利

第22章 彼と彼女の事情(跡部景吾)





「ねぇ、跡部くんって正直どうなの!??」
「…はい?」
「めちゃくちゃ強そうに見えるけどさぁ」
「…はぁ」


昼休みも終わりに差し掛かり、
彼氏である景吾くんに送られクラスへ戻った私に友人が掛けた第一声に疑問符が飛ぶ。


「ちょっと芽衣、頼華が訳わかんないって顔してるけど」
「夜よ、よ る !!」
「えっと…夜が何?」
「付き合ってるなら分かるでしょうが!」
「で、どうなの?」
「どうなの、って…」


友人の言わんとすることは直ぐに理解した。
そりゃ、付き合ってもうすぐ4年になるしそれ相応に回数もそれなりだが。
私は彼が初めてだし、彼しか知らない。
けれど、平均よりはずっと上なんだとは思う。
初めての時、そう感じたから。


「……まぁ、うん」
「ちょ、何!!」
「………思ってる通りだとは思うよ」
「あー、やっぱそう来るか」
「だよねー!だと思った!」

うんうん、と納得する友人を横目に少し恥ずかしくなり目を瞑る。
さっきまで一緒にいた景吾くんのことがすぐ浮かばれ、身体が少し熱くなった気がした。


5時間目の本来ならば眠い時間。
私は目が冴えていた。先程の友人との会話が脳裏を駆け巡る。
はやく、会いたいな、なんて思うと更に体が火照る気がした。




委員会の集まりですっかり遅くなってしまった。
もう皆、部活はじめてるんだろうなと思い少し小走りになった。


「あ、景吾くん」
「お前も今終わった所か、頼華」

部室前で景吾くんと鉢合わせ。
返答にこくりと頷けば、ふ、と景吾くんが私に微笑む。
じゅ、と身体の芯が熱くなる。
思わず目を背けてしまった。


「…ちょっと、こい」
「…え、あ…!」

勢いよく腕を引かれると同時に部室に入る。
これはどういう状況なのか。
私の前には僅か10cm程しか離れていない景吾くんの顔、後ろには部室の扉がひんやりとしている。
恥ずかしくて目を逸らしたいのに、澄んだ青い瞳に射抜かれて動けずにいた。


「…け、景吾くん…?」
「…顔、赤いな」
「だ、だって顔近いから…」
「いや、今じゃねぇ。顔を見た時からだ。」


熱があるのか?なんてどうやら心配をかけてしまったらしい。

「ね、熱なんてないよ…?」
「そうか?」

こつん、と景吾くんの額が私の額に合わさった時、ぷつりと何かが切れた音がした。
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