第20章 お題2
跡部景吾
『その罪ごと』のヒロイン
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12月も中旬になり、期末テストも終わり冬休みが待ち遠しい季節。
今日は朝から冷たい風が吹いており、それは放課後の部活の時間になっても変わらなかった。
「うー、寒い…」
レギュラー陣と同じジャージを着ている彼女だが、ラリーを続ける彼等とは違いずっと動いている訳ではない。
「さむいー、っ」
「頼華、大丈夫かい?」
「萩之介〜、寒すぎるよ!」
「ふふ、ほらこれ、」
あげるよ、と滝が差し出したものはカイロで。
「わぁ、いいのっ?」
「寒がりの頼華の為に持ってきただけだよ」
「ありがとう、萩之介」
寒がりな頼華のために滝は密かにカイロを用意していた。
「あ、次俺だ。いってくるよ」
「いってらっしゃーい」
カイロを手に擦り合わせながらぷるぷると震えている頼華に、小動物みたいだな、なんて思いながら滝はコートに向かう。
その滝とすれ違いに跡部が頼華のいるベンチにやってきた。
「あ、お疲れ様、景吾くん!」
「あぁ、ありがとよ頼華」
頼華から受け取ったタオルを手に汗を拭う跡部。
中学生とは思えない色気に頼華は自然と唾を飲み込んだ。
「なんだ、見惚れてんのか」
「あ、ちが…わ、ない、けど…」
照れた様子で跡部から目を逸らす頼華に跡部はふ、と笑う。
「そう言えば、持っているそれは何だ」
「あ、これ?カイロだよ!」
「カイロ?」
「蓄熱剤ってのかな、それで暖かくなるの!」
「へぇ、そんなやつがあるのか」
時折、びゅう、と強い風が吹くと同時にぱさり、と頼華の肩に触れた何か。
「寒ぃんだろ?これ着てろ」
「えっ、でも景吾くん半袖…!」
「俺様は動いているから平気だ」
「ほんとにいいの…?」
「あぁ」
幾分か大きい跡部のジャージ。
それを羽織ると、ふわりと香るのは跡部の匂い。
高貴そうな柔軟剤の匂いに、跡部が愛用している香水の匂いが鼻をついた。
だいすきな人に抱かれているような気分になる頼華。
「…へへ、景吾くんの匂い」
ジャージの襟元に顔を埋める頼華の顔はふにゃふにゃと緩んでいる。襟元から覗く鼻元は少し赤くなっていた。