第18章 お題(全キャラ+α)
男鹿辰巳
『魔王の親』のヒロインです。
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「はぁ!?前の女は違ったぞ!??」
「なっ……………辰巳の馬鹿ぁぁぁぁ!」
パチン、と乾いた音が屋上に響いた。
「あー…またやってるし」
「ダー?」
少し離れたところでふたりのやり取りを見ていた古市はひとりため息を吐いた。ベル坊といえば不思議そうな顔で男鹿と頼華を見ていた。
「前の女って何!!その女の所に行けば!?」
「あぁ?大体お前がな!─────」
いつもの軽い口喧嘩のつもりだった。だけど、先日、頼華が他の男と歩いているのを見てしまい、そのせいか、男鹿はイライラしていた。それを頼華には聞けず、軽い口喧嘩のつもりが火種となりつい、前の女、なんて言ってしまった。
ハッと男鹿が気付いた頃には泣きじゃくる頼華が目の前にいた。女泣かすとか最低だな、男鹿、と古市は哀れみの目で見ていた。
「お、おい、頼華、」
「だいきらい、っ…!!」
もう嫌だとしゃがみこんでしまった頼華にベル坊が近づいた。
「あー、う………」
「ひっ…べ、るちゃ…」
ベル坊を抱き上げて自分の腕に抱き込む頼華。
うー、あ!と何とか元気づけようとしているベル坊がいた。
一方、男鹿といえば、頼華にだいきらい、と言われたのが効いたのか放心状態だ。
ベル坊がすぐそこにある男鹿のズボンの裾をくいくいと引っ張る。
「…ベル坊、」
「…だ!」
「…あぁ、そうだな」
言葉を交わさずともベル坊の言わんとすることが分かった男鹿は、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「…頼華、」
優しく彼女の頭に手をやればピクリと反応した。
「…あー、その、だな」
「……」
「………………悪ぃ」
「…!」
「お、男鹿が…謝ってる」
頼華も古市も驚いた。男鹿が素直に謝るなんて今まで無かったから。普段は勿論、頼華と喧嘩したときだっていつも曖昧だった男鹿が。
「…馬鹿め古市、俺だって真面目なんだよ」
「…辰巳、」
「何だ?」
「…前の女、って言った」
「それは言葉のアヤってもんでだな…」
「…馬鹿」
「………だーーっ、もう!」
ガシガシと頭を掻き、ぐい、と男鹿はベル坊ごと頼華を抱きしめていた。