第18章 お題(全キャラ+α)
織田信長
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「前の女はもっと理解があったぞ」
「…なら、よりを戻せばいいじゃないですか」
震えた声で呟いた頼華に気づいた時にはもう遅く、彼女は逃げ出そうとしていたので慌てて抱きしめた。
「…離して、ください…っ!」
「…すまん、悪かった。」
ポロポロと彼女から流れる涙が着物に吸い込まれていく。
吸い込まれた部分は濡れたあとが拡がっていくばかりだ。
こうなってしまったのも、大名たるが故、なのだろうか。
地方の大名が謁見に来た際、必ずと言っていい程に、私の娘はどうかと紹介される。それは頼華を某地方の姫だと言い、自分の傍に置いてから尚のこと、それは増えていた。
少しでも、あの、織田信長との繋がりを持ちたいという下心丸出しのものではあるが、日ノ本を統一しようとしている手前、それは簡単に断れるものでは無かったのだ。
頼華が居る手前、とりあえずは顔を見る程度にはしていたのだが。どうしても2人きりにさせたいのであろう大名たちは、自分の娘を置いて先に領地へと戻っていたのだ。
それが頼華を泣かせてしまった要因であるなと信長は思いつつも、さてどうしたものか。
「前の女性のところに戻ればいいじゃないですか…っ!」
「…」
「あたし、だって…素敵な人、探しますっ!」
「…それは誰だ、許さんぞ」
意味がわからない、とイヤイヤと顔を振る頼華。
「…っ」
「貴様でないと俺の傍に居ることは許さん」
「…横暴…!」
「あぁ、なんとでも言え」
「…信長様なんか、」
その言葉の先を聞きたくないと信長は口を塞ぐ。
「んー…っ!ん、う、ぁ」
逃げ回る彼女のそれをしっかりと己のそれで絡み取り、暫くして離してやると、腰が抜けたであろう頼華はぺたんと床に座り込んだ。
「…ひ、っ…く、…」
「…もう、泣くな」
また嫌がれるかと思いながらも、恐る恐る彼女の涙を拭うとされるがままに大人しい彼女。
「…良く聞け、」
「前の女など、どうでもいい。」
「…っ」
「…貴様でないと壊れるのは俺だ」
「…!」
その言葉に顔を上げると、目の前の信長の顔は少し苦しそうだった。