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忍ぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで

第3章 恋煩い



さてその翌日の晩にかけてこの町の大捕り物は水戸の黄門様のご活躍あって悪は根こそぎ成敗されたのである。
九郎太は失敗と断じればすぐに足もつかぬ間に次の土地へ旅立つ手はずであったが、先にお新と藤吉が待つだろう宿屋へ向かった。
そうして今回は先に行け、自分はまだここに用があると告げるつもりだったのだがお新が藤吉が出て行って戻らないというのだからこれには九郎太も眉を潜めた。

仕方ない、時間の猶予は無い。
ガマガエル代官がしょっぴかれた事によって多少の混乱の残るこの町で、事の始まりの岡場所に向かえば番頭はへらへらとゴマをすりながらやってきて「ようこそお侍様、ささ」と金を受け取る手を出しながら奥に進めようとする、

するとやり手の女が奥から飛び出してきて「やだよ旦那、真葛は今若い男の客が」という。番頭はぎょっとした顔をして九郎太を止めようとするが、先ほどまでいたその男が見当たらない。
慌てて二階に駆け上がるも何処にも見当たらない、ならば大丈夫か、遊女たちの邪魔をしてはならぬと狐に包まれた顔で降りてゆけば、九郎太は二階の天井裏より無音で降り立った。
そうしてすらり、と刀を引き抜いて、知った障子を勢いよく開いた。

「――な、なんだお前いきな、 だ、旦那ぁ?!」

九郎太の目に飛び込んて来たのは、まあどこか予想していた。己の部下である藤吉と藤吉に今まさに組み敷かれている花魁の姿を。
真葛は藤吉と九郎太が仲間である事など察してはいない。ただ、その長身の男が現れるとは思ってもみなかった――二度と、見る事すらないのだろうとそう高を括っていた。その衝撃で今自分が男に抱かれているということなどすっかり忘れてぽかんとしている。
逆に藤吉はといえば真葛に挿し入れた陰茎を縮こませている。

「何をしている藤吉。おれは遊んでいる暇などない、すぐに出られるようにしておけと言っておいたはずだが?」

九郎太は青くなって震えてしまっている藤吉にこの状況をまるでなんとも思ってないかのように告げる。
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