第3章 兄について思う2,3の事
sideイルミ
ぐさりとクリームを纏った果実にフォークが突き刺さり、柔らかいスポンジが崩れた。
もぐもぐと膨らんだ頬っぺたが動く。
胸焼けしそうな甘ったるいそれを、幸せそうに頬張る兄は此方を全く見ない。
「美味しい?」
「うん」
問いかけても目線を上げることはなく、次は何にしようかとテーブルの上をさ迷ってる。
それが何となく面白くないと思って、アレコレちょっかいをかけたのは割りと昔の事で、今となってはもう諦めてしまっている。
ハルイは食べることが好きだ。
あまりに幸せそうに食べるし、食べても太らない体質だから好きなようにさせている。
ミルキが太ったのはハルイせいではないだろうか。
キルアはそうならないように見張っとかないと。
家の食べ物には毒入っている。
それを小さい頃からこうも食べるから、13歳となった今ハルイは特別修行するまでもなく毒に強い。
「この後の仕事の帰りにお菓子買っていいー?」
「珍しいね、いつもは通販じゃん」
「店頭じゃないと買えないんだよぉ……」
むすっとした顔でシュークリームを頬張りすぐに破顔する。
幼児みたいにコロコロと表情が変わるこの男が、彼のゾルディック家の長兄だとは誰も思わないだろう、とこっそり溜め息を吐いた。