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【弱ペダ/荒北靖友】フライデー・ナイト・マックイーン

第1章 第1話


 五時十五分だ。終業時間を告げる「夕焼け小焼け」がスピーカーから流れ始め、パソコンのモニターから目を反らした。眉間の皺を人差し指で伸ばす。どうにも、最近このあたりの皮膚が弛んできた気がする。
「ちよ子さん、今日、メシ行きます? 吉田さんと、美幸さんは行くって」
「え? 今日なんかあったっけ」
「庁内メール見てなかったんですか? 市民公開査定、うちの課のぶん、前倒しで今日することになったって。午後七時からですよ」
「嘘、見てない。やだ、今日は私が夕飯作るって言っちゃった」
「あらら……じゃ、メシどうします?」
「今日はやめておく……あーあ、電話入れとかなきゃ」
「まだまだ新婚ですねえ」
「そんなんじゃないって」
 この三日間、終業後午後六時半からぶっ続けで行われる、市民の前で今年度主要事業の成果を発表する「市民公開査定会」。そのプレッシャーに、このフロアも浮き足立っている。資料は前もって提出しているからいいとは言え、明日やる予定だったことが一日前倒しになるというだけでも妙なストレスを感じた。査定とは言え、今年度は新規事業もなく、資料をもとに説明をして、おそらくは質問も二、三で終わるのだろうけれど。
 ほんと、時間内にやってほしいよね、と漏らせば既に夕食に出る準備をはじめている隣席の井上くんは「ほんとにね」と苦笑し、吉田さんと店の相談を始めるのだった。
 席を立って向かったのはフロアの西側角に位置する給湯室だ。人気がないのを確認し、ポケットに入れていたiPhoneを取り出す。「あ」行をスクロール。コール四度目で電話は繋がった。
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