第3章 生きる為には食べよ
「全部食べたね。いい子」
いつの間にか後ろから抱きかかえられている。
拒否する事も可能なのだが、覚悟をきめて諦める事にした。
昨日の行いから分かるように、私の役割は明白なのだ。
命に関わる事でない限り、受け入れてしまった方が痛い思いをせずに済むと思う。
それに、幼子でもあやすように私の頭を撫でる燭台切様の手はとても優しくて、このまま甘やかされていたいとも思った。
誰かに優しくされたい。
それくらい望んだって罰は当たらないはずだ。
「ねぇ、君。主から名前をもらったんだよね?教えてくれない?」
後ろから顔を覗き込む燭台切様。
その仕草に私達の体格差を感じる。
「『主』とは、審神者様の事ですよね?」
「そうだよ。あの人がこの本丸の主だからね」
「はい。私の名は、彩…と」
「彩ね。そう呼ばせてもらうよ」
食べさせてもらっていた時と同じく、人当たりよく微笑んだ。