第3章 生きる為には食べよ
「あ、あの…。自分で食べられます」
「いいから、いいから」
お膳を持って来た燭台切様は、私の隣に座ると何故だか自ら匙を持ち、真っ白なお粥を掬って私の口元へ持って来た。
「で、でも…」
「大丈夫。熱くないよ。ほら、口開けて」
人当たりよく笑う黄金の瞳。
その奥に吸い込まれそうで、
なんだか恐ろしくて、
おずおずと口を開けるしかなかった。
「いい子」
朱色の匙に載る真っ白の粥が忌々しく感じる。
運ばれた匙を口に含むと、歪んだ思いとは逆に、温かくほのかなお米の甘味がひろがり、咀嚼する度に胸が満たされる感覚がした。
「美味しい…」
思わず口から出た言葉に、目の前の人は優しく微笑む。
「もっと食べて」
再び口元に運ばれた匙を、今度は躊躇い無く口に含んだ。