第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
蝶屋敷に来て1週間。
最初は絶対安静と言われていた刹那だが、機能回復訓練もそつ無くこなし
明日無事に任務へと戻る。
今日は蝶屋敷に居る最後の夜。
お許しも出てせっかくだからと近くを散歩する。
そんな最中、前方に見覚えのある半々羽織を見つけて刹那は駆け寄った。
『冨岡様』
呼んだ相手は一瞬戸惑う素振りを見せて、すぐ無表情へと戻ってしまう。
「お前は....なぜ俺の名前を知っている。」
『柱の方のお名前は覚えております。冨岡様もお散歩ですか?』
「そうか。いや、任務の帰りだ。」
それきり黙りこむ冨岡に別れを告げ歩きだそうとした時、
「俺は鬼殺隊柱として失格かもしれない。」
不意にそう言われた。
言葉の意味がわからず、じっと冨岡を見つめ返せば、なんとも言えない顔をした冨岡と目が合う。
『鬼に関する事ですか?』
刹那の言葉に冨岡の揺らぐ瞳がさらに揺らめいた。
意を決したよう語られた内容は刹那の想像を超えるものだった。
任務先で出会った少年と、鬼になったその少年の妹を殺さずそのまま自分の育手の元へ向かわせたというのだ。
普通なら考えられないことだろう。
鬼殺隊とは鬼を滅するのが役目。
柱ともなれば、その責任はもっと重くなる。
ならば何故。
『どうしてそのような事を?』
「何か違うと思ったんだ。あいつらは俺の知る鬼の末路とは違うと、そう思ったんだ...」
言う冨岡だが、自分の判断に自信が無いのだろう。
徐々に小さくなる声がそれを語っている。