第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
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「時に暁天少女!君は柱の者に名前で呼ばれているそうだな!君も名前で呼んでいる者が多いと聞いた!!」
暫く静かな時間が続いたかと思えば、不意に俯いていた顔を上げ煉獄が言う。
なぜその事を知っているのかと思ったが、きっと胡蝶辺りが教えたのだろうと半ば無理やり納得する。
『え、ええ。皆さん名前で呼べと仰るので。最近では実弥も呼び始めましたね...』
「杏寿郎!」
『え?』
「ん?俺の事は呼んでくれないのか?」
先程までしんみりしていた当人とは思えない。
それ程の勢いで言われ、戸惑った顔をすれば、立派なたてがみをしょんもりと下げられてしまう。
(うっ、そんな小動物のような顔をされても....)
一応お世話になっている家の次期当主であろう煉獄に、そこまで砕けてもいいものかと考えあぐねる刹那だが、
「駄目なのか?」
これには勝てない。
『杏寿郎....』
「うむ!なんだ!刹那!」
名前を呼んだ瞬間太陽のように笑った煉獄に、頬に熱が集まるのを感じる。
何故かは分からない。
何時もより早い心音が苦しいのに、もっと呼んでくれと言われて何度も名前を呼ぶ。
繋いだ手から自分の心音がバレてしまわないかと、柄にもなく焦ってしまう。
その日は一日、刹那の病室から煉獄と刹那が名前を呼び合う声が蝶屋敷中に響きわたり、
後程胡蝶に大目玉を食らったのは言うまでもない。