第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
宇髄は再度深く後悔した。
刹那は、目の前で父親を殺された後どんな思いで剣の腕を磨いたのだろう。
鬼と罵倒される度、どんな気持ちだったか...
(そんなお前に、俺はあんな言葉を吐いたのか....)
20にも満たない少女が抱える過去。
親兄弟を殺された者など、鬼殺隊では珍しくない。
しかし、余りにも酷ではないか。
鬼に父親を殺され、怒りを募らせようにも自分も鬼でありまだ力のない幼子。
どれだけ歯がゆく、どれだけ辛かったか。
「くそっ、」
宇髄の中で落ち着きかけた自分への苛立ちがまた湧き出た。
『っ、あ、ここ、は....』
そんな酷く沈む部屋の空気を断ち切るように、刹那の目が開く。
あの苦しみ方からして、きっと刹那も同じものを見たはずだ。
なのに、
『宇髄、様...お嫁様は、ご無事、ですか?』
目が合って一言、若干枯れた声で刹那が言った言葉はやはり人の事。
(ああ、お前は....馬鹿なことを言った俺を、俺の嫁の事を、こんな時でも考えてくれるのか....)
「お嫁さんは無事ですよ、貴方の体も「すまねえ!恩に着る!本当に俺は、馬鹿なことをした!!」
胡蝶の言葉を遮るようにして宇髄の口から謝罪が飛ぶ。
何度も何度も。
整った顔を歪ませながら、必死に謝罪する宇髄に刹那は言う。
『お気になさらないで。大切な方を、失うのは酷く恐ろしい事でしょう。貴方は守っただけです、貴方の大切な方を....』
きっと以前の宇髄ならこの言葉を気にもせず流していただろう。
しかし刹那の記憶を垣間見た今、言葉の重みが違う。