第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
血塗れの父親に縋り付く刹那の姿。
2人の後ろには見た事のない男が立っている。
気配からして鬼、しかし今まで宇髄が戦ってきたどの鬼よりも禍々しい気を感じる。
(まさか、あいつは....)
宇髄の予感は当たっていた。
それは自分達鬼殺隊が長年追い求めている男。
「無惨、刹那に、手を出すなよ...」
(鬼舞辻無惨!!!)
動こうにも体は金縛りのように動かず、ゆっくりと刹那と父親の元へ歩く宿敵を眺めることしか出来ない宇髄。
振り下ろされた鬼舞辻の攻撃を、刹那を抱えすんでのところで躱した父親はそのまま崩れ落ちた。
しかし、宇髄は見た、崩れ落ちる瞬間父親が何か呟いたのを。
刹那、地面から一角の鬼が現れる。
「朱嘉-シュカ-、刹那を連れて逃げろ...最後の命令だ。」
「っ...御意」
そう父親が言うやいなや、一瞬顔を歪めたその鬼は泣く刹那を担いで光の速さで走り去る。
「生きろ刹那、お前は俺と玉藻の宝物だ。そして俺と縁壱の...希望なんだから。」
『嫌!!父様!!離して朱嘉!!父様がまだ!嫌あああ!!!』
刹那の悲痛な叫びと、2人を残してその姿は闇に溶けた。
「ふん、小賢しい真似を。どの道お前は死ぬのだここで。」
「はっ...鬼神様を舐めんじゃねえよ。そんな簡単にくたばってたまるか...」
不敵に笑う父親だが、どう見ても致命傷を負っている。
このままでは、
(くそ!動けよ俺!)
確実に死ぬ。
「最後に言い残すことは?」
「縁壱の意志は受け継がれてる、精々余生を楽しみな。」
「....戯言だ。」