第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
恨み言を言われると思っていた宇髄にしてみれば、鳩が豆鉄砲をくらった気分だ。
「俺を責めないのか?」
「今ここで君を責めたとして、暁天少女に怒られてしまうのは俺だ!きっと夕飯のさつまいもを抜かれる!!そんなのは御免蒙りたい!!」
「さつ、まいも...?」
予想の斜め上を行く煉獄の回答に、神妙な面持ちだった宇髄の表情が崩れる。
「く、はっはっはっ!確かに、お前にとっては最悪だな!」
我慢できずに大笑いする宇髄に煉獄がむっとした顔で、笑い事ではないと真剣に言うものだから
更に宇髄のツボが刺激される。
「よし!!悩むのは辞めだ!俺様らしくねえ!!まずはこいつが起きたら、ド派手に謝罪をかましてやるか!」
一通り笑い終わった宇髄の表情は憑き物が落ちたかのように明るい。
「良いぞ宇髄!!その調子だ!!」
上手い具合に煉獄に乗せられている宇髄だが、
素直に煉獄の言葉を受け取ったのは、刹那への疑心が解けた証だろう。
まあ、あの時目の前で起こったことを無かったことにできる程、宇髄が無情では無いというだけなのだが。
『っ.....ぅあ...』
少しだけ場が穏やかになったのも束の間、刹那の呻き声が2人の耳に届く。
酷く苦しい様子で胸の辺りを抑えている。
「暁天少女!傷が痛むのか!?」
煉獄の必死の問いかけにも反応せず、目も開いていないことから意識が戻った訳では無いことが分かるのだが、
鬼の血のおかげで内部の傷はほとんど治ったと聞いていたのに
この苦しみ方は、
(異常だ...)
チリ____
チリリッ_____
異常はそれだけではなかった。
刹那の呻き声と共に鼓膜に響く火花のような音。
「一体どうしたと言うんだ...くっ....」
「おい煉獄何だ、この音...それに、頭が...痛え....」
チリリッヂリ
バチンッ...!!
2人を苦しめる音は徐々に大きくなり、瞬く間に弾ける。