第7章 漆ノ型. 気付く ~宇髄天元・冨岡義勇の場合~
聞き慣れた2つの声に、案外早かったな等と笑ってしまう。
きっと宇髄が急いでくれたのだろう。
宇髄も宇髄で刹那に対する態度を反省していたようだから、心配ないかと部屋に近づいてきた足音に合わせるように扉を開けた。
開けた先には予想通りの2人。
「胡蝶!!彼女は、暁天少女は無事か!!」
「落ち着いて下さい煉獄さん。今丁度処置が終わったところです。」
普段からは想像出来ないほど取り乱す煉獄に、胡蝶はくすくすと笑みを漏らした。
「悪いな胡蝶、任せっきりになっちまった。」
「良いんですよ。治療するのが仕事ですから。それより、私は他の隊士の治療に戻ります。お2人に刹那さんをお任せしてもよろしいですか?」
「うむ!勿論だ!!」
「俺は祭りの神だぜ?派手に任せろ!」
蝶屋敷を出た時よりいくらか落ち着いたのか、宇髄はいつもの調子を取り戻し始めている。
やはり宇髄はこうでなくては。
では、と言って出て行く胡蝶を見送った2人は刹那に向き直る。
布団の隙間から覗く痛々しい包帯に煉獄の顔が歪む。
硬く目を閉じたままの刹那の頬を撫でる煉獄。
(温かい。)
(生きている。)
誰の目にも分かるほどに酷く安心した顔をするものだから、宇髄はバツが悪くて堪らない。
元はと言えば刹那の怪我は自分の言葉が原因だ。
「煉獄、悪かったな。俺はこいつを信用できずに酷え事言っちまった。」
沈黙の中絞り出した宇髄の謝罪に、煉獄は一瞬きょとんとした顔をするだけで直ぐにいつもの笑顔に戻る。
煉獄も宇髄がどれだけ嫁達を大切にしているのか理解しているから、元から彼を責める気など微塵もなかった。
ただ、
「君は自分が守りたいものを守っただけだろう?謝罪したいなら俺ではなく暁天少女にしてやってくれ。」
そう優しく笑う。