第5章 伍ノ型. 束の間の休息 ~甘露寺蜜璃・胡蝶しのぶの場合~
(ああ、駄目だ....)
気付かされてしまった。
背負うものの大きさに押しつぶされないように懸命に生きてきた年端も行かない少女はただ、
労いが欲しかったのだと。
一言でもいい、自分がここに居てもいいのだと思わせてくれる存在や言葉が必要だったのだと。
(そうか、私は、孤独だったのか....)
そう気づいてしまえば、気疲れした心が溶けるようにじわりと暖かくなる。
笑って何か返そうにも、ツンと痛くなる鼻にそれは止められる。
「あ、あらあら!どうしましょうしのぶちゃん!泣かせてしまったわ!私何か悪い事言っちゃったかしら?」
甘露寺が戸惑うのも仕方がない。
先程まで一緒に笑っていた刹那が突然、堰を切ったようにポロポロと涙を零し始めたのだから。
『ふっ...うぅ.....』
叫ぶことも出来ず、口元を覆ったままただただ泣く刹那を胡蝶が抱き寄せる。
「偶にはいいじゃありませんか、強がらず繕わず赤ん坊のように泣いても。貴方は今日までよくやってくれていますよ。私や甘露寺さんは貴方の事、結構好きです。」
よしよしと背中を撫でてくれる胡蝶の手の優しさに、更に涙が出た。
「あ、あのね!私刹那ちゃんの事好きよ!伊黒さんから沢山話を聞いたの!刹那ちゃんの強さも優しさも!一緒に任務は行ってないけれど、それでも私は刹那ちゃんと仲間になれて良かったわ!!」
そう言って手を握ってくれる甘露寺の目にも刹那と同じように涙が浮かぶ。