第5章 伍ノ型. 束の間の休息 ~甘露寺蜜璃・胡蝶しのぶの場合~
「何で甘露寺さんが泣くんですか。まったくもう。」
「だ、だってぇ」
そのままひんひんと本格的に泣き出した甘露寺の背中も、胡蝶は撫でる。
泣く女2人に宥める女1人。
泣き出す片割れは片手に団子という異様な光景。
それでもそこにあるのは確かな思いやりの心だけ。
暫し流れる優しい時間。
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気がすむまで泣いて幾分か落ち着きを取り戻したのか
刹那が未だ涙に濡れる目を薄く開き、ぼそりと呟く。
ねえと、始めた刹那の声に気付き2人が顔を向ける。
耳をすまさ無ければ聞こえない程小さい、
消え入りそうな声。
『蜜璃、しのぶ....また、私と一緒に出掛けてくれる?』
精一杯だった。
今日まで誰にも弱みを見せず、気丈に振る舞ってきた刹那にとっての最大限の甘え。
それは裏を返せば、この2人に心を開いたと言うことで。
自分の支えになりたいという2人の提案への、返事でもあった。
言葉の意味を察した胡蝶と甘露寺は一瞬だけ目を見開き、
直ぐに満面の笑みを刹那に向ける。
「「勿論!!」」
『....ふふ、ありがとう』
心底嬉しそうな2人の表情に刹那の口元も緩む。
響く2人の返事に薄く笑って、刹那はたくさんの意味を込めた感謝を述べた。
この日から芽生えた3人の友情が、今後更に深まるのは言うまでもない。
そして甘露寺が泣いてしまったことを何処から聞きつけたのか、
刹那の元へ20枚にも及ぶネチネチとした文句ばかりの文が伊黒から届くのは、
また別の話。