第5章 伍ノ型. 束の間の休息 ~甘露寺蜜璃・胡蝶しのぶの場合~
話の意味が分からず刹那は首を傾げる。
すると意を決したように甘露寺がおずおずと話し始めた。
「あのね、刹那ちゃんを初めて見た日すごく可愛くて綺麗な子だなって思ったんだけどそれと同時に、いっぱいいっぱいで苦しそうだなって感じたの。」
『私が、苦しそう?』
自分ではそんなつもりがなかったものだから、キョトンとしたまま尚も首を傾げ続ける刹那に胡蝶が続ける。
「鬼である事、柱に認められなければいけない事、その中で絆を深めなければならない事。一気にたくさんの事を抱えすぎて、いつか潰れてはしまわないかと甘露寺さんはハラハラしていたようですよ。」
そう言いながら優しく微笑む胡蝶。
「私しのぶちゃんに言ったの。せめて私達女の子の中だけでも刹那ちゃんの落ち着ける場所になれたらいいなって。だからね、今日刹那ちゃんを沢山笑わせてあげられたらいいなって、楽しいって思ってくれたらいいなって勝手に目標にしてたの!」
言っちゃったわ、恥ずかしいわ、と
恥ずかしそうに顔を赤く染めながら言う甘露寺に、刹那は声をかけられずにいた。
鬼殺隊に入ってからというもの何度か任務を共にした柱の者たちは、刹那の事を理解し良く接してくれはする。
しかし一般隊士はそうもいかず、鬼のくせにと見えない場所で罵詈雑言を言われる事も1度や2度ではなかった。
柱が居る時は何も言わない一般隊士が、自分1人の時に向けてくるあの目。
品定めされているようなあの目が心底嫌いだった。
いくら冷静な刹那と言えども、何度もそんなことがあれば傷つかない訳では無い。
心の中では大丈夫だと、聞き流しているつもりだった。
生まれた時から鬼なのだ。
幼い時から自分に向けられる敵意には慣れている。
そう思っていたのに、