第5章 伍ノ型. 束の間の休息 ~甘露寺蜜璃・胡蝶しのぶの場合~
「許してくださいね刹那さん。甘露寺さんったら伊黒さんから貴族の家の任務のことを聞いたらしくて、それからずっとこんな調子なんです。」
『ああ、あの家の』
「ええ。伊黒さんはなかなか人を認めない方なので、そんな人が認めた貴方に何か贈り物をしたいって聞かなかったんですよ?」
あ、私もしのぶで大丈夫ですとついでのように言う胡蝶。
元凶は彼かと痛い頭を抑えることも出来ない刹那は、困ったように笑うしかない。
思えば鬼殺隊に来て柱合会議が終わってからそこまで日にちは経っていないにしろ、
毎日が目まぐるしすぎてこうやって誰かとゆっくり過ごすのは久しぶりかもしれない。
誰かと話そうにも同年代といえば何時も近くにいるのはどうしても煉獄だけになってしまうし、
千寿郎は幼すぎる。
煉獄の父に関しては部屋から出てこない。
しかし刹那も年頃の娘だ。
たまには歳の近い女子と喋りたくなるもの。
そう考えてしまえば、嫌々だった今のこの現状もなんだか有難い。
それに甘露寺の持ってくる着物も趣味のいいものばかりで、ちょっとだけならと先程までの戸惑いは何処へやら
『甘露...みつり、貴方が右手に持ってるそれとても綺麗ね。』
なんて存外乗り気になってしまう。