第5章 伍ノ型. 束の間の休息 ~甘露寺蜜璃・胡蝶しのぶの場合~
「キャーーー!これも素敵ね!でもこっちの色も捨て難いわ!あ!でも案外この色も似合うんじゃ!うーん!迷っちゃうわ!!」
「甘露寺さん、刹那さんが困っていますよ?」
様々な流行りの着物を持ったまま、クルクルと自分の周りを回る甘露寺蜜璃と甘露寺を宥める胡蝶しのぶを交互に見ながら
刹那はなぜこんなことになったのかと考える。
1週間ほど続いた連日連夜の任務が一段落着き、御館様から一日休日を言い渡されたのが昨日。
それならばと千寿郎と共に食材の買い出しに行こうとなったのが今朝。
生憎煉獄は任務があり朝から屋敷からたってしまったのだが、
そのまま千寿郎と2人で街へ出掛けある程度買い出しが終わって、
それから
(ああ、途中でこの2人に会って半ば強引に連れ去られたのでしたね...)
困ったように下がった眉毛をさらに下げて慌てていた千寿郎を思い出す。
あの後千寿郎はどうしたのだろうか。
無事に家に着いただろうか。
そう思いながら未だ新しい着物を持ってくる甘露寺へと視線を戻した。
未だ彼女は店中の着物をこれでもないこれでもないと引っ張り出している。
『あの、甘露寺様...沢山お持ちになられても私今日は手持ちそんなにございませんよ?』
遠回しにもう勘弁してくれと言ってみたが、それが甘露寺に通じる訳もなくにこりと満面の笑みを向けられてしまう。
「そんな事気にしてたの?!大丈夫!今日はしのぶちゃんと私で刹那ちゃんに贈り物をするってきめてるんだから!」
『は、はあ....』
「それと敬語も無し!私のこともみつりって呼んでね!鬼殺隊でなかなか出会えない女の子同士なんだから!」
ふんすふんすと鼻息の聞こえてきそうな顔で言われてしまえば、もう反応する気も無くなってしまい
刹那は大人しく甘露寺に着物を合わせられる。
それを見てふふふと胡蝶が笑った。