第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
刹那に窘められ、止まったままだった不死川と伊黒がやっと思考を戻したのは、
刹那が鬼の首に刃を突き付けてからだった。
穏やかな口調とは裏腹に、ビリビリとこちらまで届く殺気。
その殺気の主は紛れもなく刹那で、柱合会議の時好き放題自分に罵られていた女と同一人物なのかと不死川は驚く。
不死川だけでは無い。
煉獄や伊黒に至るまで、刹那の殺気の鋭さに息を飲む。
「煉獄、刹那は何の呼吸の使い手なのだ。こんな重い圧がある呼吸を俺は知らないぞ。」
浅く息を吐いた伊黒は煉獄に問う。
ずっと気になってはいた。
鬼であり人である刹那は一体どう戦うのか、
果たして自分達と同じような呼吸なのか、
それとも自分達も知らないような戦い方をするのか。
しかし問われた煉獄もその問いに答える事が出来ずにいた。
先の共同任務でも刹那は呼吸を使わなかったから無理もない。
そこで気付く。
最初は呼吸を使えないのだと思っていたが、違うのだ。
呼吸を使う必要も無いほどに刹那自身の戦闘力が高かっただけだと。
故意に隠していた訳では無いだろう。
ただただ使う機会がなかった。
それだけの事。
(呼吸も使わず鬼と渡り合うとは....)
「よもや、底知れぬとはこの事だな。」
「そりゃどういう事だァ?」
ぼそりと呟いた煉獄の言葉を不死川が目敏く拾う。
しかし目線は刹那と鬼に向いたまま。
おそらくこの場にいる全員が同じ事を考えている。
知りたいと。
自分達は余りにも刹那を知らない。
能力も、生活も、思いも。
過ごした期間の短さを考えれば無理も無いが、今後命を預け合うと言うならそれでは駄目なのだ。
(((もっと深く知る必要がある、絶対に...)))
ひとつも見落としてなるものかと言うように、3人は口を閉ざして刹那へと視線を向けた。