第26章 素直な二人
「体が入れ替わった…だと?」
「「はい。」」
二人を前に、さすがに少し驚きの声を上げた志々雄さん。
「元に戻る見込みは?」
「わかりません。」
「わかんないです。」
「戦力になるのか。」
「無理ですね。僕も叶さんも。」
「…」
「僕は刀は捌けますけど。でも、叶さんの体じゃ縮地使えないみたいです。」
「そうか。」
「うう…ごめんなさい。」
志々雄さんを前にしているからか、萎縮する叶。宗次郎はそのまま言葉を続ける。
「何度も試してみたんですけどね。叶さんの脚、筋肉がなさすぎて使いものにならないし、すぐに筋肉痛になっちゃって。」
「……」
「あとやっぱり体が重い。」
「前言撤回!小僧おろすぞ。今なら3枚くらいにはおろせそう。」
「へえ。じゃ、やってみてください。」
「上等よ。大根おろしにしてくれるわ…あれ、刀抜けない。」
「隙だらけじゃないですか。」
「ぎゃ!!いったぁぁぁ!!志々雄さん、こいつ頭に峰打ち噛ましてきたんですけど!!」
「うるさいなぁ、ほら、3枚におろすやり方教えてあげますから。身を以てね。」
「……おまえら、男女の関係になったんだって?」
叶も宗次郎もぴたっと押し黙る。
「…志々雄さん。」
叶…いや、叶の姿をした宗次郎が口火を切る。
笑みの消えた真剣な表情。叶も思わず真剣に彼を見つめる。
「宗次郎…?」
「……恥ずかしいんで、里芋と人みたいな関係だと認識してもらえませんか。」
「あんたっ、まだ私のこと芋だと思ってんの!?」
「前はじゃがいもって言ったんですよ?よかったじゃないですか、里芋に昇格しましたよ。」
「品種が変わっただけで同類じゃんっ。」
「ふーん。まあ呼び名なんて大した問題じゃねえけどな。豚に真珠、馬の耳に念仏、月とすっぽん、猫に小判、どれも同じ意味だろ。」
(…志々雄さん。どっちなの?ねぇ、どっち?私が豚とかすっぽん側なわけ?)
(…志々雄さん、月とすっぽんは違う意味合いです。)
「あと叶、お前はうるさい。」
「なんで私だけ……くっ。」