第19章 恥ずかしいけど
「え?」
「今日は、ありがとう…迷子になっちゃってたから、その…迎えに来てもらって本当に心強かった…。ありがとう。」
「……」
「あ、それもあるんだけど…これは、」
…慣れないことする緊張からか腕が震えてくる。
「…私、失礼なこと言っちゃった、よね…」
「え?」
「えっと………失恋したとき。」
──私、宗次郎のこと、好きならよかった。
「……」
「…その、今思えば……心配してくれて親身になってくれてる…宗次郎に、自分の都合でそんな勝手な想定話するなんて…それはなしだなって…気付いて。」
こんなこと言うの、正直とても勇気がいる。
でも。
「私、人の気持ちも考えないで…好き勝手言って…。でも宗次郎に嫌がらせしようとか、そんなこと思ってたんじゃなくて………。宗次郎に…甘えて、甘ったれてた…」
「……」
「だからあの、あれ………うう、何て言ったらいいんだろ…うん…」
まっすぐ宗次郎の目を見ようと顔を上げる。
「本当にご」
──ふいに、手のひらを当てられ口を覆われる。
「……?」
「…だから、謝らなくていいって言ってるじゃないですか。」
「……」
真剣な眼差しと──
優しく触れている手に不意をつかれて何も言えない。
固まって動けなくなっていると。
「本当に…馬鹿ですね。」
優しい、微笑み。
穏やかな瞳。その表情に釘付けになり──
ふわっとしたそよ風が胸の内を通り過ぎた感覚。
思わず見とれてしまっていた。
…実は、あんなこと言ったから……ひょっとして慰める意味でキスされたのかなとも、思ってたんだ。
だから…大丈夫だよ!って伝える意味での感謝も込めて、贈り物をしたんだ。
けど…
同情とか慰めとかでは、ないの…?
じゃあ…それって…?
「じゃあ、帰りましょうか。」
「…うん!」
…でも。
言いたかったこと、やっと言えて。受け入れてもらえたのが嬉しくて。
だから今日は。
「ありがとね…」
……なんとなく、宗次郎の腕にくっつきたいなと思いながら、並んで二人で歩き出した。
恥ずかしいけど。
(ちゃんと言わなきゃ。)