第11章 Hello,crazy
初めて叶さんと会った時のこと。
「宗、今度叶に会わせてやる。」
そう志々雄さんが言ってたのは覚えてる。
「叶?…ああ、この間志々雄さんが雇ったっていう方ですか?」
「ああ。…まあ雇ったというより、」
「?」
「拾ったって感じだな。」
人を拾うなんて初めて聞くなぁって思った。その翌日に叶さんと対面して、なるほどと思いましたけど。
「初めまして!お世話になってます、叶と申します!宗さんのこと志々雄さんからよく聞いてます。」
「…初めまして。」
「うわぁ…宗さん女の子みたい!初対面なのにすみません、でもすっごくかわいいですね…!」
…初対面の人に宗さんなどと呼ばれたのは後にも先にもこれだけだった。他にも色々突っ込みどころがあったけど、あまりこれ以上余計な情報を入れたくなかった。
そう思ったところに、
「宗、ここのこと叶に教えてやってくれ。」
「…え?」
「あと、まあこいつ少々世間知らずなんだが、ついでがあれば一般教養も教えて鍛えてやってくれ。」
「宗さん、よろしくお願いしますっ。」
こうしてこの日から僕の日常は変わった。
叶さんは腕も立たないし、物覚えも悪かった。始めは僕もあれこれ言おうとはしなかったけど。
それはある日を境に変わった。叶さんと一緒にどこかに出掛けた時だった。
「宗さん宗さん。」
「?何か………」
「わーい、引っ掛かった、引っ掛かった♪」
振り向いたら叶さんの指が頬に刺さり、彼女は歓喜してました。
「……」
「宗さんって意外と隙だらけですね♪」
「…あはは、本当ですね♪」
ぷちぷち、と。
そう。例えるなら糸が切れていく感じ。
「…でも、叶さん。」
「?」
「あなたは欠陥だらけですけどね。」
「!いったああい!ほっぺ、ほっぺ千切れる!」
「それは叶さんが弱いからですよ。」
「どういう理屈!?」
ほっぺを抓んでみたけど、なんか心なしか気持ちよくて少し強めに抓んでた。
「いひゃい、いひゃい!」
「え、なんて言いました?よく聞こえませんね。もっとはっきり言ってください。」