第1章 強者からの因縁
気持ちいい風が吹いていたお昼下がり。
…のはずだった。
奇しくもあの男…もといあの小僧に私の眠りは妨げられた。
「痛いっ!……なにするのよっ」
「おはようございます、叶さん。」
「いや、おはようございますじゃないでしょ。」
「?」
…「?」だと?すごいなこの人、罪の意識というものがないのか。
「これ!たんこぶできたんですけど!」
「ああ。叶さんてば、あまりにも無防備だったからつい。」
「つい、で済む問題?今あなた鞘で殴りましたよね?」
「殺してもいいかなと思って。」
「…」
死んじゃったとしたら、弱い叶さんが悪いんですよと飄々と言ってのけやがった、この人。
「弱いも何も、寝込み襲われたら抵抗出来ませんよ!」
「涎垂れてますよ。」
「えっ!?って、ちょっと、切っ先を人の顔に向けないでください。」
「せっかく親切に教えてあげたのになぁ、お礼の一言も言えないんですか。」
「いや、謝罪の一言もないんですが?」
ああ、最悪の寝覚め。頭が、殴られた患部がじんじんする。
「あそこの壁にぶつけてみれば治るんじゃないかなぁ。」
「心を読まないでください。それと微塵も治れと思ってないでしょ。」
「…やっぱり斬りましょうかこの際。」
「うぇ!なんで!?」
「目障りです。」
「当然の抗議してるだけですよね!?」
「どうしてただの昼寝で髪が爆発するんです。目障りなんです、それ。」
「…切るなぁぁぁ!」
強者からの因縁
(強ければ生き、弱ければ死ぬんですよ。)
(だからって、なんで仲間なのにこんなに敵視されるの!?)