第1章 1
唇をすぼめてしまった私を見て、明らかに苛立ちの含まったため息をつく跡部。
「言っておくが、お前が心を開かない限り他人はお前と仲良くしようなんてこれっぽっちも思わねーだろうぜ」
「・・え?」
ずっと跡部から目線を逸らしていた私だったが、今言われた言葉に反応するように彼へと視線を注いだ。
「お前は口数も少なねーし、常に無表情だ。周りからしたら何考えてるか分かんねぇんだよ」
「・・・・。」
「だからそういうところで一線引かれてんだよ」
跡部はズバズバとストレートな発言をして来るが、全て正論だ。確かに私は周りに一線引かれているのかもしれない。もちろんそれは私に原因があるわけで・・・。
「・・・どうすれば・・いいの」
「はぁ・・だからまず、自分から挨拶するだの笑ってみるだのしてみたら周りの対応も変わるだろうぜ?」
「・・・・分かった」
跡部と喋っているにつれ、私が跡部より劣っている点がいくつも見つかっていく。どんどんどんどん、彼に勝てる自身がなくなっていく。でも、彼が教えてくれたことは私にとってとても重要なことのように思える。だから、悔しいけど・・なんか気恥ずかしいけど・・・凄く感謝の念でいっぱいになった。
話がすんだ後、跡部は練習に戻ると言って部室から出ようとドアの方へ歩いていく。そんな彼を私は少しためらながらに呼んだ。案の定、彼は怪訝そうな顔をしながら振り向いたけど、一言・・言いたい。
「跡部・・・ありがとう」