第1章 怪物との境界線
そうして男の頭の上に手を翳す。
『血鬼術…記憶置換』
これは私が使う血鬼術の1つだ。
文字通り記憶を改竄するものなのだが、本来ならば使わないに越した事はない。
使うのに体力も神経も使うので、腹が減る。
折角ご飯にありつけたのに、また空腹になるのは御免だ。
とりあえず大丈夫そうな部分を残して危ない所は改竄させてもらおう。
目を瞑り彼の記憶を辿る。
あー…ここら辺から消して…新しい記憶を…。
「おーーーい、佐藤さーーーん」
「た、炭治郎っ…そんなに大きな声出して鬼でも出て来たらどぅするんだよぉっ…!!」
「大丈夫だっ、善逸!不思議な匂いはするけれど、鬼だ!と言う匂いはしない!それにここに佐藤さんがいる匂いがするから大丈夫!」
「でもでもっ、遠くから来るかも知れないだろう!」
「大丈ーー夫だっ!!佐藤さぁあああーーーんっっ!!」
「ひえぇぇ…話聞いてないよぅっ…」
…騒がしい。
なんとか記憶を繋ぎ合わせている途中だが、なんとも子供達が騒がしい。
まて、この時間に子供…?
この鬼が出る夜も更けた時間に…?
ま、まさかっっ…!!
「うおぉっ、ちんたらちんたら遅せぇっ!!」
「ちょっ、ま、待つんだっ!伊之助っ!!」
「猪突猛進っっっー!!!」
ガタバタズドーーーン…と言う音が相応しいだろうか。
その音と共に3人?の子供が部屋に押し入ってきたのだ。
目の前には猪頭がいて、額に傷のある子、その隣に黄色髪の子だ。
突然の事に判断が遅れた、気付くのも遅れた。
と言うか突然人様の部屋に押し入ってくる輩に対応出来る筈もない。