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FFⅨ Hi Betty! (Long)

第8章  make up


「どうしちゃったの?少しおかしくなった?」

発言もそうだが、何が一番おかしいかというと、言ってる本人が比較にならないくらい綺麗なところだった。

「褒められてるっていうのに、随分な言い様だね。」
「別に綺麗じゃないもの。」
「…この自覚のなさだ。いっそのこと閉じ込めてしまおうかな。」

彼は私の瞳を覗き込むように間合いを詰め、ゆっくりとした手つきで頬を撫でた。
誘惑的な仕草だった。

「だから…」
「誰にでもついていくわけじゃないんだろう?」

私の言葉は遮られた。
代わりに言いかけたことと、ほとんど同じ内容が返ってきた。

「そうじゃなかったら困る。ちゃんと僕のだって約束してもらわないと。」
「そうだって言って………ん?」

最後までよく聞かずに返事をしようとしたはいいが、途中で意図していた内容と若干の相違があることに気がついた。

「なんだい?」

クジャの言葉を頭の中で繰り返している間に私の身体は捕らえられ、彼の腕の中に収まっていた。

「…子供のおつかいじゃないのよ?他の人についてったりしない。」
「それで?」

彼が求めている言葉はわかっていた。
しかし口にするのには躊躇いがあった。
クジャのものとはどういうことなのだろう。
純粋に所有としての意味合いだけなら何の問題もなかった。

-でもきっと違う。

「だめ。上手くバランスが取れなくなるの。」
「君は大胆なのか慎重なのか、よくわからないね。」

彼の透き通るように白い手が私の髪を滑り、細長い指先が耳の形をなぞる。
擽ったさに肩が跳ねるのを見ると、彼は小さく笑った。

「知ってるかい?狂おしいくらいに愛おしくて仕方がないんだ。僕を見つめる瞳も、甘い声も何もかも。良心的な僕は君の準備ができるまで待っていてあげようと思ってるけど、そうじゃない僕は今すぐにでも君のことを欲しがってる。何に従ったらいいのかな。」

クジャは困ったように視線を落とし、私の鎖骨のあたりに顔を埋めた。
こういった際にどうすべきか、私には知識も経験もないというのに、彼に悪いことをしているような気持ちだけは工場の出荷箱のごとく積み重なっていく。

「私、どうしたらいい?」
「このままでいてくれればいい。取って食べたりはしないさ。安心しなよ。」
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