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FFⅨ Hi Betty! (Long)

第7章  tit for tat


店を出てからのことだった。

「一つ聞きたいことがあるんだ。」
「なに?」

クジャが聞きたいことを想像するのは簡単だった。

「なんで、着付けを男にお願いしたんだい?」

案の定、だ。

「コルセットがきつくて具合が悪かったんだ。でも、女の人に言っても直してもらえなかったの。みんなクジャと話していたかったのね。」

特に嘘をつく必要もないので、私はあったことを正直に話した。

「僕に相談すればよかっただろう?それくらいの機転が利かないとでも思ったかい?」

クジャは虫の居所がよくないのか、いつもより少し語気が強いように思えた。
確かに、私の振る舞いは彼を立てているとは言えなかった。

「そんなこと思ってないわ。あの中に割って入っていくのが気が引けただけ。」

私は彼の問いかけを否定した。
けして彼のことを信用していないわけではなく、本当に声をかけずらかっただけなのだ。
彼は諦めたように目を伏せた。

「…悪かったね、気がつかなくて。当日は何かあったら必ず言うんだ。君の警戒心は紙のように薄っぺらいから、少し心配だよ。」
「わかった。…ごめん。」

クジャは後ろめたさを感じたのか、さっきとは打って変わって憂た面持ちを見せる。
紙のようにとは言われたものだったが、下手に口出しはしなかった。

「それと、さっきみたいなことは他にしてくれるなよ。」
「……どれのこと?」

思い当たる節としてはいくつかあったが、どれを指しているのかがはっきりしなかった。
挑発的に思われないかという心配はあったが、私は聞き返した。

「不用意に甘えた顔をするなってことだよ。」

甘えた顔。ドレスを決めた時のことだろうか。
もしそうなのだとしたら、正しくは不用意ではなく、故意になるのだが。

「…あー、ああいうのは柄じゃないから大丈夫だと思う。」
「けっこうしてるから言ってるんだ。」

そうだろうか。
私は直近の記憶を思い返してみる。

「なんていうか、変な雰囲気になるの、クジャくらいよ?他の人にはこれといって何も思わないもの。」

誤解されるような節は、クジャとのやり取り以外では一切ない。
基本的に私は恋とか何とかには無縁だ。
だから困っているのだ。
そして、口に出してから何かがおかしいことに気づく。
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