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FFⅨ Hi Betty! (Long)

第1章 empty


***

それは、何度目かのブラネ様とクジャ様の面会でのことだった。
面会の際に、紅茶と茶菓子をお出しするのはお決まりだった。
私はその日もそれらの準備をしていた。
いつもと変わりないティーポットに昨日仕入れたばかりのローズヒップティーの茶葉を入れ、お湯を注ぎ、トレイに乗せ、いつもと同じ階段を登り、二人が待つ迎賓室へと運んだ。
そこまでは順調だったが、迎賓室のテーブルにトレイを乗せたその直後に事件は起きた。
私がブラネ様の前に、ティーポットを置こうとした時だった。
クジャ様との会話で気分が高揚したブラネ様の感情のままに振り上げた腕が、私の持つティーポットに丁度ぶつかったのだ。
宙を一回転したティーポットはテーブルをころころ転がり、地面に落下し、大きな音を立てて割れた。
地面を見ると花弁が散るかのように、白い破片が散らばっていた。
ブラネ様に紅茶がかからなかったのは幸いだったが、代わりに私のエプロンと靴下に赤茶色の染みができていた。

「何をしておるのじゃ!!」

ブラネ様の怒声が響いた。
しかし、これくらいは聞き慣れたものだった。
紅茶や茶菓子の好みが合わなければ、必ずと言っていいほど、怒声を浴びせられ、ティーカップやお菓子の乗った皿を投げつけられ、酷い時には拳が飛んできた。
この怒声はまだ第一段階であり、たいして珍しいものでもなかった。
そしてそれは、クジャ様の前であろうとも変わらずに行われていた。

「申し訳ございません。ブラネ様にはかかっていないでしょうか?すぐ、片付けます。」

私は謝り、紅茶がかかっていないと知りつつ、ブラネ様を心配する。
食器か拳のどちらかが飛んでくるかもしれない。
避けようと思えば避けれるのだが、以前それをして、更にブラネ様の機嫌を損なうこととなったので、最近はおとなしく制裁を受けることにしている。
結論から言うと、私の予想が当たることはなかった。

「シェリー、お前は今ここで解雇じゃ!!これを片付け終わったら、すぐ荷物をまとめて出て行け!!」
「ブラネ様…?」

モップとチリトリを取りに行こうとする足が固まる。

「もう、二度とその顔を見せるでない。」

ブラネ様は改まった調子で言い放つと、冷えた目で私を一瞥した。

「そんな…でも…」
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