第4章 淡雪に滲んだ愛嬌
肩に彼の顎が乗せられ、距離の近さに慌てる。
「…ねっ?宗次郎、せめてお部屋に入ろう?」
「はぁい。」
せめて少し暖かいところで、と諭すも、相槌のような間延びした声が耳元で響く。
「……動けないんだけど。」
「ああ、そうですよね。」
にへら、と微笑まれて、それがあまりに無邪気なものだから蛍はつい照れてしまう。
「…あ、今照れました?」
「……!」
「あ、図星ですか。当たっちゃいましたぁ。」
にこにこ、と微笑まれる。
そのままぎゅうっと抱きしめられる最中、ふと気付いた。
「…わかった、宗次郎。あれでしょ?私で暖とってるんでしょ?」
「……わかりました?」
あはは、とあっけらかんと声を漏らす彼に、こちらも笑みがこぼれる。
「なんかべたべたしてくるなぁと思った。」
「…もちろん、蛍にくっつきたいのもありますよ?」
「……」
「あれ?呆れられちゃいました…?」
少し声のトーンを落としながら、こちらの顔を覗き込もうとする彼。
垣間見て振り返り、お返しにえいっとばかり抱き付いた。
「わっ、」
「違う、照れてんの…」
「そう…ですか。」
少し動揺したような宗次郎。
「…私が暖めてあげるね。」
蛍は優しく微笑んだ。
淡雪に滲んだ愛嬌
(…ね、宗次郎。そろそろ自分で歩いてくれない…?)
(今日は蛍におんぶに抱っこするって決めたんです♪)
(引きずって歩くの疲れたぁ…)