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いつだってあなたのことが

第4章 淡雪に滲んだ愛嬌


「蛍、ただいまぁ。」

「あっ!宗次郎、お帰りなさい。」


愛らしい少女がぱたぱた、と足音を立てて宗次郎を出迎えた。
宗次郎の恋人、蛍。


「あ。」


彼の姿を見た蛍は目を丸くする。
──宗次郎はぽんぽんっと肩の上に積もっている雪を振り払った。


「雪、降ってたの?」

「ええ、綺麗でしたよ。」

「…寒くない?大丈夫?」


何か拭くもの取ってくるね、部屋に行ってて、と言い残して蛍は宗次郎にくるりと背を向けたものの。


ぱしっ

気がつけば、宗次郎に左手首を掴まれていた。


「宗次郎…?」

「蛍、行かないでください。」

「え、でも…」


彼の身体を見つめる。
ひんやりと冷えた彼の手。
かかった雪は払い除けたけれども。髪や肩や背中が少し濡れている。


「宗次郎が風邪ひいちゃうよ。」


蛍は手首を掴んだままの宗次郎の手に戸惑う。


「だって…蛍さん。」

「?」

「こうしたいんです。」


宗次郎は後ろから包み込むように蛍の身体を抱きしめた。


「わっ…ちょ、ちょっと…」

「しばらくこのままでいたいんです。」

「…!」


強引ながらも、濡れて冷たくなってる箇所が自分に触れないようにさせているあたり。
強引になりきれていないな、と蛍は微笑ましく思って笑みをこぼした。


「…あれ?なんかにこにこしてます?」

「んー?なんだろうね、宗次郎のがうつったかな。」

「ふーん…?」


宗次郎の手が蛍の手に絡み付く。


「冷た…」

「蛍の手、あったかいですね…」

「だって、ずっと室内にいたから…」

「そっかぁ。」


……。


「うー…やっぱり落ち着きます、蛍とくっついてると。」

「わ、あ…っ、」

「はぁ。」


お腹のあたりを抱えるように腕が回される。
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