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いつだってあなたのことが

第20章 いついつも愛させて


「蛍さ~ん!」
「あ、宗次郎…、わっ!」
「失礼しますね。」

にこにこと笑顔を浮かべて蛍に駆け寄る宗次郎。

なんだろうと思い蛍は振り向くのだけれど、もう向き終わるかというところで後ろからぎゅっと抱き留められていた。

「…!」
「……」

それきり、無言で。

蛍は何か訊いた方がいいのかと思うのだが、宗次郎の顔色を窺おうにも抱き締められていて後ろに振り向けないものだから。
そのまま蛍も無言で胸を高鳴らせていることしかできない。

暫しの静寂の後に、蛍は後ろの宗次郎に向き合おうとするかのように小首を傾けてみた。

「あの、宗次郎…?」
「はい。」

躊躇することなく声を返す彼。
きっと、いつものように揺れない笑顔でいるんだと蛍は悟った。

……前触れもなく抱擁されて吃驚しているこちらが何かおかしいのだろうか、そのような考えが図らずも込み上げてくるのだけれど。
でも、知りたいという気持ちは隠し通せなかった。

「ど、どうしたの…?//」
「…そうですよね、急にこうすると吃驚してしまいますよね。」
「…?」

ようやく気が付いたかのように宗次郎は淡々と漏らすけれど。その腕は蛍の身体をしかと抱きしめたまま。
蛍の胸の鼓動が速まっていく。

「あ、あの、宗次郎さん…?」
「そうですねぇ、何と言ったらいいか。蛍さんのこと。」

衣擦れの音と共に身を捩らせて。
蛍の肩口に顎を乗せて。

「蛍さんを癒やせたらなぁって。」
「えっ、?」

優しい声音で。耳元で囁かれる。

「──いいですか蛍さん、今は僕に甘えちゃってください。」
「…な、なんだか照れるけどいいのかな…?」
「はい♪」



──そうしておいたまま。幾許かして彼はふと考えるように声を上げた。

「…あれ?」
「……?」
「ひょっとして、これって僕が蛍さんに甘えてるのかなぁ。」

後ろから覗き込むように顔を傾ける気配。
思わずどきりとする。

「蛍さんに甘えてもらおうと思ったんですけど、ほら、人肌に触れてると落ち着くって言うじゃないですか。こう抱き締められると。」

さらっと恥ずかしいことを告げて。
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