第15章 とある疑問符
幼い夢主と、少し年上の宗次郎のお話。
平和な世界です。現代のお話と想像いただいても読めます。
──僕は蛍の子守係。
毎晩寝る前の蛍に付き添い、お話をしたり、本を読み聞かせたりするのが日課。
これはそんな夜のお話。
「ねえねえ!宗次郎!」
「どうしたんです?」
「宗次郎は恋って、知ってる?」
「…蛍、どうしたんです?急に恋だなんて。」
「いいからっ。どうなの?」
「知ってますよ?」
「…どんなの??」
「え?うーん、どんなのって言われても…」
「宗次郎の嘘つき。知ってるって言ったじゃない。」
…なんか、かちんときますね…。
「うるさいなぁ、蛍にわかりやすく説明するのは難しいんですよ。」
「蛍、子供じゃないもん!」
「はいはい。」
「で!恋って?どんなもの?」
恋が何かわからないのに、子供じゃないってえばられてもなぁ…
「…ある人のことを好きって思うことですよ。」
「好き?」
「ええ。」
「私宗次郎のこと、好きだよ?じゃあこれは恋なの??」
…ええーと。
「蛍のはちょっと違うんじゃないかなぁ。」
「え?どうして?どうして??」
「うーん。恋の『好き』はね、その人のことを考えるだけで…なんていうか…苦しくなったり、もどかしくなったりする感じみたいです。(…と由美さんや鎌足さんからは聞きました。)」
「???」
「あ、蛍には難しすぎましたね。」
「苦しい…?もどかしい…?」
「蛍のはどうですか?」
「…わかんない。」
…そうですよね。第一、蛍が恋について考えるなんて。それこそ由美さんや鎌足さんに何か言われたんだろうなぁ。
「蛍、焦らなくてもいいんですよ。ちょっとずつわかるようになりますから。」
そう言うと、蛍はぱあっと顔を輝かせる。
「ほんとに?」
「ええ。」
「ほんとにほんとに!?」
「本当ですから、今日はもうそろそろ寝ましょうね。」
「はぁーい!」
嬉しそうに蛍は大きな枕に身を沈め、僕はそうっと布団をかけながら微笑みかけた。