第14章 ありったけの好きを伝えて
こちらがようやく気付いたことが可笑しかったのか、くす、と笑みをこぼして……
よりこちらに寄せられる笑顔。
「可愛い。」
「…っ、!///」
「蛍さん、好き。」
ふわり、と揺れる彼の柔らかそうな前髪。
優しい眼差しがとても綺麗で。清んだ明るい声がとても可愛らしくて。その声を象った唇はとても端整で。
──だから、余計に。宗次郎とは対照的に慌ててしまうし内心とても取り乱してしまう。
かちゃりという音が聞こえた。
──外に出られる。けど、この夢のような時間ももうお終いか。
頬に灯った熱すら何だか愛おしくて、でも嬉しい時間だった。そんなことを一瞬のうちに考えた。
考えたのだけど。
「蛍さんのこと、好きです。」
もう一度そう告げた宗次郎の目に熱が灯って見えるのは──夢か幻か。
「…えっ、//」
「本気ですよ?」
にこにこ、と笑ってみせるけれど、その頬は少し色付くように染まっていた。
「蛍さんのこと。好きです。」
「……っ、///」
もしや、もしや……
黙りこくって一生懸命考えを巡らせるけど、心がついて行けていない。
そんな様をまるで見通すかのように、目をまた細めて。今度はいたずらっぽく囁かれた。
「…その様子だと肯定としか見れませんよ?」
「そ、その…っ、」
「……別に、蛍さんが伝える責務はもうないですけど…期待してしまうじゃないですか。」
そう言って、少し寂しげに笑うものだから。
そんな顔を見たくない、とばかりに顔を歪めていつしか宗次郎をまっすぐ見つめ返していた。
「そ、宗次郎……あ、あの…っ、//」
「……蛍さん。」
「あの、そのっ……私も…っ、//」
やっと言えた言葉。
にこりと優しく微笑まれ、またその言葉を喜びと共に告げられた。
ありったけの好きを伝えて
(ひょっとすると、宗次郎は少し確信犯なところもあったりするかもしれません。ないかもしれません。)