第13章 je t'aime à la folie
細部はお好きにご想像ください。
※現代設定、同棲してます。
「…宗次郎へのチョコレート用意できなかったなぁ。」
とぼとぼと帰路に着く蛍。幾度となく腕時計を見ては自責の念に囚われ溜め息を溢す。
──ようやく目処が付いたかと思えば、かなり遅い時間帯になってしまった。
(前々から用意しようと思ってたんだけど…今月入ってから忙しくてお店に買いに行けなかった…)
──まあそれも、理由にならないよね…
恐らくもう帰宅しているであろう宗次郎のことを想っては、また一つ二つと溜め息をついた。
「ただいま…」
「蛍さん!お帰りなさい。」
そうっと玄関の扉を開けて。
本当は後ろめたくて消えてしまいたい程なのだけれど、帰りを待ってくれているであろう恋人に向けて──元気が出なくて小さく静かな声になってしまったけれど──ただいまと口にしたら、嬉しそうに出迎えに駆け寄ってくる宗次郎。
「外、寒かったでしょ?…わあ、手冷たいじゃないですか。ほら、早く入ってください。」
「あ、ありがとう…」
彼の暖かな手の温もり。笑顔を向けてくる宗次郎を見て思わず言葉が詰まるけれど、やっぱり吊られて笑顔になってしまう。
けれど思わず必死に隠した。隠して室内に入り、ソファに腰かけたけれど、すぐさま隣に腰掛けた宗次郎に顔を覗き込まれる。
「蛍さん。さっき嬉しそうな顔しましたよね?」
「……」
「なぜですか?なんで隠すんですか?」
好きだから、と思わず口ずさみそうになったけれど、でも恥ずかしいから言えない、堪えるけれど。
まるで心内を見透かすかのように、にこにこと笑顔で見つめられて、顔に血が上っていくのを感じる。
「……蛍さん、本当僕のこと好きなんだから。」
「!」
「けど、僕もですから。よかったぁ。」
えへへ、と満面の笑み。
…もう、いいや。どうしてもこの人の前では私は弱い。
「もう……宗次郎反則だよ。」
「でも、好きなんでしょう?」
「…御名答です。」
意地悪そうな目を向けられ、羞恥に覆われながら言葉を返すと、ふわりと抱きしめられた。