第12章 閉じておいた夢が芽吹くまで
(やっぱり僕からもう少し近付いた方がいいのかなぁ…いっそ好きって言ってもいいんだけど…けどこの調子だと、きっと蛍さん困ってしまうだろうからなぁ…)
もう少し、機会を窺うか──
普段蛍さんと楽しく茶会をしている時のように笑いかける。けれど。
「…蛍さん。」
告白なんて困らせる言葉は言わないけど、せめてほんの少し、僕の気持ちを──今は気付かれなくてもいいから、ひっそりと伝えてもいいですか。
「僕も蛍さんといると楽しくて、好きだと思っていますよ。」
──今はこれでいいや。少し気恥ずかしくなってしまったけど。
誤魔化すようにあはは、と明るく声を放って蛍さんを見ると。
「……っ///」
蛍さんは大きく目を見開いて、そして何かに耐えるように唇をきゅっと結んで。
そして、みるみるうちに頬が赤く染まっていった。
「蛍さん?どうしました?」
「…えっ?……なにがっ…?」
「顔…すごく真っ赤ですけど。」
「え、気のせいじゃ、ないかな…」
必死に何かを隠そうとしてるみたいに。噛みながら濁すように答える。
何を慌てているんだろう?何を隠そうとしてるんだろう。さっきまでは普通だったのに。
──僕は何か言ってしまっただろうか。好きという言葉は伝えたけど、“蛍さんを女性として好きだ”なんて本心は告げちゃいない。
………あ。さては。
「…蛍さん。僕のこと何か意識してます?」
僅かに瞳孔が開いたかと思うと、さっと目線を外される。
けれど僕がじっと眺めていると、罰が悪そうに僕の方へ目線を戻して「そんなことないよ」と言う。
──それらはあっという間の時間での出来事だったんだけど。
…わかっちゃいました僕。
「…なんでもないの、大丈夫。」
「蛍さん。」
そうとなれば。この機会を逃してなるものか。