第8章 Anisodontea
「疲れてるの?」
「疲れてませんよ。疲れてたら何かしてくれるんですか?肩揉んでくれたり?お茶淹れてくれたり?お菓子出してくれたり?」
「態度大きいわねぇ。お饅頭勝手に食べてたじゃない。」
「食べない蛍さんが悪いんですよ。そもそも、僕に食べられた方がお饅頭だって本望ですよ。」
思わず吹き出してしまい。じろ、と睨まれた。
「何笑ってんですか。」
「だって無茶苦茶なんだもの。笑うわよ。」
「まったく、人が疲れてるのに。」
「あ、やっぱり疲れてるのね。」
「…」
…無言になる宗次郎。認めたくなかったなんて強気だなぁ。
でも、こんなに簡単に見破られちゃうなんて、本当に疲れてるんだろうな…。
「…宗次郎。」
「…なに。」
「これ終わったら、膝枕してあげよっか?」
「…」
暫く考えるようにして、ぷい、とそっぽを向いた。…なんか今日の宗次郎かわいいかも。
「ちょっと待っててね。構ってあげるね。」
「…別にそんなこと誰も言ってませんけど。」
「そっか。」
「…」
さすがにちょっと要らない言葉だったか、と自省し机に向き直ったその時。
「でも、まぁ。いいかな。」
続けて聞こえた「お願いしますね」、という口調はいつもと違って格段に投げ槍で、ぶっきらぼうだけど。
僅かに口許が弧を描いてたのを見逃さなかった。いつもとは違うけど、こういうのもいいな。
Anisodontea
(…宗次郎、足痺れてきたんだけど…)
(退きませんよ?蛍さんが言うから乗ってあげたのに何言ってるんですか。)
(えっ、そうなるの?どうでもいいけど一瞬だけ休ませて…!)
アニソドンテア
花言葉は「優しい感受性」「今日限り」
ずっとにこにこしてる故の反動が現れたらどうなんだろうと。
気の置けない人にだけ見せるのではないでしょうか。
ぞんざいに接していますが、宗次郎が気を許してる証ということで。