第1章 伝わらない|スキルマスター
…ずるい、ずるい
必死に今まで貴方の事を忘れようと
考えないようにしてきたのに
今更、好きだなんて
涙がポロポロと零れ落ちる
拭っても拭っても
止まることを知らないかのように
涙が零れ落ちる
そっ、と彼の綺麗な指が私の涙を拭う
「必死に、…今日までっ…
貴方を…忘れようとしてきたのに……!」
でも結局大好きな貴方の事を
忘れた日なんか1日も無かった
マスター、やっぱり
貴方の事が好きなままだった
とん…、
彼の胸へと体を預ける
マスターの温もりに触れて
安心してまた涙が零れる
「さあ、疲れたでしょう。
ゆっくり休んでください、傍にいますから…
おやすみなさい、○○さん」
先程の戦闘での疲労と
眠気を誘う彼の心地よい声に抗いながら
必死に気持ちを伝える
私も、好き。マスター…
好きなの…と、
そして
眠りに落ちた
「…う、ん?どこだろ、ここ。」
「おや、○○さん、起きましたか。
おはようございます、寝顔可愛らしかったですよ」
「あ、あれ…?マスター?夢じゃなかったの…?」
「夢ではないですよ、現実です。
これからは大切にしますね」
ちゅっ…
と頬にキスを落とされる
ぼふっと音が聞こえそうな程
真っ赤な頬になった○○
刺激が強すぎです……と
小声でマスターに文句を言ってはみたが、
当の本人は、
紅茶の準備で聞いていないようだった
(紅茶ありがとうございます…。美味しい…。)
(良かったです。今日は2人きりでゆっくり
過ごしましょうね。)
心臓が休まらない1日が始まりそうな予感
-END