第2章 ***
「もう…勝手に俺の前からいなくなるな」
「っ…」
私の頬に触れた彼が真剣な眼差しでそう囁く。
その言葉に私は胸が一杯になり、ぎゅっと彼の首に抱き付いた。
「本当にごめんなさい…」
「…澪……」
「もう絶対にあなたの側を離れない……だから…」
──私は"あなたのもの"だって証明してみせて…?
それから何度絶頂を味わったか分からない。
意識を失いそうになる度、その快楽が私を現実へと引き戻す。
「ぁっ、ぁっ…大和、さん…っ…」
「くッ…、澪…っ…」
互いに名前を呼び合い、固く手を握り合った。
「またイっちゃ…!」
「俺もだ…ッ…」
どちらからともなく唇を貪る。
今度こそ意識を手放す…そう感じた瞬間。
──澪…愛してる……
確かにそう聞こえた…
(うぅ…体が動かない……)
翌朝。
ひと晩中互いを求め合った代償として、私は彼の腕の中身動き取れずにいた。
当の彼はと言えば、正反対に清々しい顔をしている。
「…無理をさせて悪かったな」
「………」
一応悪いとは思っているのか、今だ私を腕に抱きながらそう呟く彼。
(そう言えば今何時だろう…)
ふと部屋の時計に目をやれば、もうすぐ8時になるところだった。
「た、大変!遅刻…!」
彼の腕から抜け出しガバッと体を起こす。
ここから職場まで只でさえ距離があるのに…!
悲鳴を上げる体に鞭を打ち、脱ぎ散らかされた下着や服に手を伸ばそうとすると、背後からぎゅっと抱き締められた。
「…どこに行く気だ」
「どこにって会社に決まってるじゃないですか!」
今すぐここを出たとしても間に合うかどうかあやしいものだ。
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