第2章 オレはもうぼっちゃまじゃない
驚き声のした方を見ると、すごい勢いで歩いてくる帝丹高校生と目が合う。
「げっ…!そ、園子……」
「ちょっとアンタ、げっ…て何よ!全然連絡してこないで何やってんのよ!?」
「ちょっ…園子静かにっ…」
落ち着いた店内に不釣り合いなボリュームで言葉を発する園子の口を慌てて抑える。
流石に園子も周囲の視線に気づいたようで、アハハ…すみません…と謝り小声で詰め寄ってきた。
「連絡待ってたのよ!?」
「ごめんごめん。なかなか家の片付け進まなくて…」
怪盗キッドのこともあって怪盗業が忙しい、なんて本当のことなど言えず苦笑いをこぼす。
すると目ざとい園子が私の向かいに座っている快斗と、恐らくまだ紅いであろう私を見比べ、ははーんとニヤリ顔をした。
「江古田のイケメン捕まえてデートに忙しくしてたってわけね?」
「でっ…!?違う違う!!デートじゃ…」
「え?オレはそのつもりで誘ったけど?」
被せるように発せられた快斗の声に、否定しようとした口を閉ざす。
まさかの発言に、なんて…?とポロッと出た声は隣に立つ園子ですら聞こえないのではないかと思うほどの小ささで。
「だーかーらぁ、オレは礼とデートしたいと思って誘ったの!」
男と2人だぜ?デート以外の何ものでもねぇだろ、と口を尖らせ文句を言う快斗に、それ詳しく!と詰め寄る園子。
まぁまぁ、礼が困ってるよ、と園子を宥めてくれる蘭の優しさに甘えてこの場をなんとか逃げたいところ。
「と、とにかく!改めてちゃんと連絡するから!ね!?」
「ほら、礼もそう言ってるしまたにしよ?」
絶対よ!?今度連絡しなかったら承知しないからね!?とまだまだ言い足りない様子の園子の背中を押しながら、彼氏さんも騒がしくしてすみませんでした、と快斗に謝る蘭。
だから、違うって!!
そんな私の声は、まだ彼氏ではないけどね〜、と笑顔で手を振る快斗の声によって遮られ、口から出ることは叶わなかった。
「騒がしくてごめんね」
「いんや?若ぇーうちはあれくらい元気でいいんじゃねぇの?」
アイス食べながら年寄りみたいなこと言わないでよ、そう言いながらも、先程の快斗のデート発言が頭の中でループしてしまう。
結局その日は家に着くまで快斗の顔をまともに見ることができなかった。