第2章 オレはもうぼっちゃまじゃない
奥に見つけた席に座り、改めて店内を見回す。1人客が多いためかゆったりとした音楽が聞こえる他は、外の喧騒がうっすら聞こえるくらいでかなり落ち着いていて。
いい感じだろ?とアイスを持ってきてくれた快斗に、すっごく!と返すと嬉しそうな笑みが返ってきた。
どーぞ、と目の前に置かれたアイスにいただきます、と言い1口含む。
…うっまー!
アイスの中に砕かれた抹茶のクッキーが隠れていたらしく、クッキーのほどよい苦味とアイスの甘さが相まって甘さ控えめ私好み〜〜!
あまりの美味しさにアイスに夢中になっていると、くくっ、と喉を鳴らして笑う声が聞こえ、ハッと我に返る。
「ほんとうまそうに食うなー。そういうとこ昔から変わんねーな」
そう言った快斗の瞳が、これまた今までに見たことない優しい瞳をしていて、顔に熱が集まり出す。
慌てて視線を逸らし、熱を覚ますようにアイスをかきこめば、さっきまで感じていた抹茶の旨味がこれっぽっちも感じられない。
「こっちもうまいぜ?」
そう言ってチョコアイスを乗せたスプーンを、あーん、と差し出す快斗。
え、まって。それを私に食べろって?むりむりむりむり!
自分で掬うから!この!私のスプーンで!
「だぁいじょーぶだって。変な細工はしてねーよ?」
そういう問題ではない。
この年齢にもなると、あーんとかいうやつは付き合っている男女がやるものでは…?
私の動揺に気づいていないのか、スプーンを向けたままキョトンと首を傾げている快斗。
私が意識しすぎ!?確かに昔はお互いあーんってやったりしてたけど…小学生のそれと高校生のこれとは違う気が…え、しない?
躊躇っているとさらにずいっと口元まで持ってこられたスプーン。
チラッと快斗を見ても平然としている様子から、私だけが意識しているのだと思わされる。
覚悟を決め、チョコの甘い香りに誘われるままパクッと口の中にアイスを入れた。
──あーあ。オレと間接ちゅーしちゃったな?
不敵な笑みを浮かべた快斗と目が合い、味わうことなくゴクッと飲み込んでしまったアイス。
私が恥ずかしがるのを知っててやったんだとわかり、頬杖をついて楽しそうにしている快斗に文句の一つでも言ってやろうと口を開いたところで、あーっ!という大きい声が店内に響いた。